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一時的置き場
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「僕が着るんじゃないよ、こむぎちゃんのだよ」
「むぎの?」
 依織の言葉に幼子はキョトンとする。
「そうですよ、だから、お嬢様の意見もくださいね」
 話の軌道が戻ってきたことに安堵した主はにこやかにむぎに語りかける。
「あのね、むぎににあう?」
 小さくても、やっぱり女の子。不安げに問い掛けるあどけない仕種にその場にいた者たちの心を和ませた。


「今度は一哉たちも一緒だからね」
「うん♪」
 ある程度の話を決めてから、次に詳細を話す事で落ち着いた。もともとのスポンサーは一哉であるから、彼の顔を立てる事が目的なのと、幼子に店の雰囲気に慣れてもらうことが目的だったのだ。
「おにいちゃんもきるの?」
「着た方がいい?」
「おそろいがいいの」
「ふふ、お姫様が望むならね」
 幼子を抱き上げながら、そう答える。
「じゃあ、今度は他に四人連れてきますから」
「お待ちしております」
 店を出るまでを見送ってもらい、二人は車に戻った。
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「きれいなの……」
 色とりどりの反物を前にほぅ…と溜め息をつく幼子。小さくても、目の前に出されたものの美しさがわかるのだろう。
「お嬢様にはこちらの桜が描かれたものがいいかも知れませんね」
「そうだね、可愛らしい感じでとは思っていたから」
 依織がなじみのこの呉服屋に連れて来られた幼子は反物の色鮮やかさに目をキラキラさせる。
「いおりおにいちゃんがきるの?」
 期待に満ちたまなざし。どうも余計な知識を瀬伊から仕込まれたらしい。
「瀬伊に聞いたのかい?」
 依織の問い掛けに幼子は素直に頷く。
「うん。こうおにいちゃんがテレビにでたときに、せいおにいちゃんがゆってたの。こうおにいちゃんもきれいだけど、いおりおにいちゃんもきれいだったんだろうねって」
「そう……」
 依織と幼子の会話に反物を出してくれた主は何とも言えない顔をするしかなかった。
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「こむぎちゃん、僕と車でお出かけしようか?」
 そう依織が声をかけると、幼子は読んでいた絵本から顔を上げた。
「いおりおにいちゃんとおでかけ?」
「僕とでは嫌?」
「ううん」
 ふるふると首を振るその様子も愛らしい。
「どこにいくの?」
 好奇心いっぱいのきらきらした瞳。
「着いてからのお楽しみだよ、お姫様」
 そう言って、依織は幼子を抱き上げると、幼子は依織の首にギュッと抱き付いた。

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