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一時的置き場
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「かわいいの♪」
 そう言って、幼子が指差したのは、自分より小さな子供。着物に身を包んで、千歳飴を持っている。御堂家の住人が何故だか全員用事があるらしく、オフであることを兄の把握されていたこうは幼子を預かる羽目になった。…とはいえ、子供の相手などしたことがないので、近所の公園にでも遊びに連れて行こうとしたところにその光景に出くわしたと言うわけである。
「ああ、七五三だな。お前ももああやって着物を着たのか?」
 そう皇が問い掛けると、幼子は小首を傾げる。
「むぎ、おぼえてないの。しゃしんはあったの」
「数えの三つだったら、覚えてないか……」
 数えで七五三をしたのなら、満年齢なら、二つと少しだったはず。覚えていないのも、無理はないかもしれない。
「なえちゃんはきょねんきたの。だから、むぎ、またきれるの」
「次は七つだな。あと、ちょっとだ」
「うん。むぎね、なえちゃんのきてたのをきるの♪ なえちゃん、おひめさまみたいでかわいかったの~」
 無邪気に姉の七五三のことを語る幼子だったが、皇は何ともいえない気持ちになった。姉のお下がりを妹がきるというのはよくある話だ。それを見越しての着物の購入だってよくある話だ。幼子は姉が着ていた着物を着るのを楽しみにもしている。けれど、それを複雑だと思うのは自分が弟の立場だからだろうか。
「こうおにいちゃんもしちごさんしたの?」
「ああ。したな」
 あの頃は幼子のように笑っていただろうか? そんなことを考える自分が詮無いと思い、皇は苦笑するしかなかった。
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「とりっか、とりー?」
「違う、『Trick or Treat?』だ。ほら、もう一回」
「ん~。とりっかー、とりーと!」
「もう一回、だ」
 舌っ足らずな幼子の発音を何度も一哉は訂正する。
 黒い魔女の衣装に猫耳を付けた可愛らしい魔女に扮している幼子は必死な顔。猫耳を含む衣装は瀬伊のお見立てだが、お菓子をねだりに行った相手が一哉なのがまずかった。先ほどから、何度も発音の指摘を受けている。
「う~」
 けれど、幼子の忍耐力には限度があった。大きな瞳には涙があふれ出し始めている。
「お、おい」
 一哉が焦ったところで、後の祭り。幼子は泣きじゃくる。
「羽倉、何とかしてくれ……」
「四歳児に多くを求めすぎなんだよ……」
 そう言いながら、麻生は幼子を抱き上げる。
「ほら、ちび。兄ちゃんに『Trick or Treat?』って、言ってみろ」
「と、トリッカー、トリー……」
「よしよし。ほら、HAPPY Halloween」
 幼子を抱き上げたまま、器用にポケットからキャンディを取り出すと、幼子の顔がパッと輝く。
「あさきおにいちゃん、ありがとう」
 ふにゃっと笑う幼子。
「ほら、御堂も用意してんだろう?」
「……ああ」
 そう言って、一哉がお菓子を差し出すと、幼子はおずおずと手を伸ばしながらも、躊躇っている。
「HAPPY HALLOWEEN……」
 そう告げると、幼子は嬉しそうにお菓子を受け取った。
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 テレビで楽しそうにプールで泳いでる子供たちのニュースを幼子が羨ましそうに見ていた。すると、次の日には浮き輪だの子供用の水着だのが御堂家に届けられた。
「これって、ガキの教育的に良くないはずなんだけどな……」
「昨日、こむぎちゃんに『クリスマスやおたんじょうびじゃないから、だめ!』って、叱られなかったっけ?」
「普通は逆なんだけどね……」
 子供を溺愛しつつ、子供への愛情の注ぎ方がわからない父親の図、と言うものの実例を実際に見てみるとこういう者なのかと誰もが思った。
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