一時的置き場
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こむぎSS
一哉に見つからないように、と。幼子は慎重に靴をはいて。一生懸命手を伸ばして、玄関の鍵を開ける。開けたら、こちらのものだとばかりに、カモノハシを抱っこしたまま幼子はてくてくと外に出てしまった。だが、タイミングというものは世の中にはある。
「ちび?!」
友人との約束が急にキャンセルとなり、一哉と二人きりの留守番を心配した麻生はピンクのカモノハシを抱えて歩く幼子に気づいて、慌ててバイクを止めた。高級住宅街に子供一人が歩いていること自体がそもそもおかしいし、ピンクのカモノハシは瀬伊が幼子に与えたもので。子供半分以上の大きさを持つぬいぐるみはそうそうないのだ。
「あさきおにいちゃん……」
「どうしたんだ? 御堂は?」
「むぎ、ひとりじゃないの。カモノハシさんといっしょなの。だから、おそとにでたの」
「……なにやってんだよ、あいつは」
「おそとにでたいのに、だめだっていうの。ひとりじゃあぶないって……」
「まぁ、そうだろうなぁ……」
幼子に関しては過保護すぎるほど過保護だ。
「ちび、御堂に言って出て来たのか?」
「……」
幼子は麻生の問いに、カモノハシをギュッと抱き締め、ふるふると首を振る。
「ま、だろうなぁ……」
一哉の目を掻い潜って出てきたその行動力は小さくても、むぎなのだろう。かといって、その行動をほめることはできない。
「けど、どうすっかなぁ……」
幼子を見つけてしまった以上は、このままでは置いておけない。とりあえずはバイクを何とかしなければならないが、幼子を乗せて行く訳には行かないし、一旦、家に置きに行くとしても、一哉に見つかることを恐れて幼子は嫌がるだろう。目を話した隙に見失う羽目になれば厄介だ。
「事情を話せばかまわねえかな……。御堂と懇意のはずだし……」
とりあえず、思い至った場所以外には方法も思いつかない。
「ちび、兄ちゃんが一緒に外で遊んでやるよ」
「あさきおにいちゃんが?」
麻生の申し出に、幼子はきょとんと麻生を見上げてくる。
「兄ちゃんとは嫌か?」
「ううん。カモノハシさんも一緒にでもいい?」
幼子にとってはカモノハシは大事な存在というより、すっかり相棒なのだろう。それを察して、麻生は笑って答える。
「かまわねえよ。じゃあ、バイクを置きに行くから、一緒に行こう」
「……おうちに戻るの?」
不安そうに麻生を見上げる幼子の頭を麻生は撫でてやる。
「別のところに置くから。かわりに御堂にはちゃんと連絡するからな。ちびむぎがいなくなったら、心配するだろ?」
「おにいちゃんたちも?」
「当たり前だろ? ちびは大事だからな」
「ん……」
殊勝に頷く幼子に麻生はよしよしと再び頭を撫でてやった。
「じゃあ、兄ちゃんにちゃんと着いてついてこいよ」
「はぁい!」
いい子のお返事を聞いて、麻生は足を目的地にへと向かわせるのであった。
「ちび?!」
友人との約束が急にキャンセルとなり、一哉と二人きりの留守番を心配した麻生はピンクのカモノハシを抱えて歩く幼子に気づいて、慌ててバイクを止めた。高級住宅街に子供一人が歩いていること自体がそもそもおかしいし、ピンクのカモノハシは瀬伊が幼子に与えたもので。子供半分以上の大きさを持つぬいぐるみはそうそうないのだ。
「あさきおにいちゃん……」
「どうしたんだ? 御堂は?」
「むぎ、ひとりじゃないの。カモノハシさんといっしょなの。だから、おそとにでたの」
「……なにやってんだよ、あいつは」
「おそとにでたいのに、だめだっていうの。ひとりじゃあぶないって……」
「まぁ、そうだろうなぁ……」
幼子に関しては過保護すぎるほど過保護だ。
「ちび、御堂に言って出て来たのか?」
「……」
幼子は麻生の問いに、カモノハシをギュッと抱き締め、ふるふると首を振る。
「ま、だろうなぁ……」
一哉の目を掻い潜って出てきたその行動力は小さくても、むぎなのだろう。かといって、その行動をほめることはできない。
「けど、どうすっかなぁ……」
幼子を見つけてしまった以上は、このままでは置いておけない。とりあえずはバイクを何とかしなければならないが、幼子を乗せて行く訳には行かないし、一旦、家に置きに行くとしても、一哉に見つかることを恐れて幼子は嫌がるだろう。目を話した隙に見失う羽目になれば厄介だ。
「事情を話せばかまわねえかな……。御堂と懇意のはずだし……」
とりあえず、思い至った場所以外には方法も思いつかない。
「ちび、兄ちゃんが一緒に外で遊んでやるよ」
「あさきおにいちゃんが?」
麻生の申し出に、幼子はきょとんと麻生を見上げてくる。
「兄ちゃんとは嫌か?」
「ううん。カモノハシさんも一緒にでもいい?」
幼子にとってはカモノハシは大事な存在というより、すっかり相棒なのだろう。それを察して、麻生は笑って答える。
「かまわねえよ。じゃあ、バイクを置きに行くから、一緒に行こう」
「……おうちに戻るの?」
不安そうに麻生を見上げる幼子の頭を麻生は撫でてやる。
「別のところに置くから。かわりに御堂にはちゃんと連絡するからな。ちびむぎがいなくなったら、心配するだろ?」
「おにいちゃんたちも?」
「当たり前だろ? ちびは大事だからな」
「ん……」
殊勝に頷く幼子に麻生はよしよしと再び頭を撫でてやった。
「じゃあ、兄ちゃんにちゃんと着いてついてこいよ」
「はぁい!」
いい子のお返事を聞いて、麻生は足を目的地にへと向かわせるのであった。
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外は快晴。今すぐにでも飛び出したい。だが、あいにく、この家の主以外の誰もが不在であり、主である一哉も仕事で手が放せない状態。
「だめなの?」
「駄目だ。俺は手が離せないし、一人では危ないからな」
「でも、むぎ。だいじょうぶだもん」
「駄目だ。最近は物騒な事件が多いからな」
遊びに行きたいと言い出した幼子に対し、一刀両断の一哉の言葉に幼子の瞳に大粒の涙が浮かんでくる。流石に一哉も慌てて、手を差し伸べようとしたが、簡単に振り払われて。
「いいもん! かずやおにいちゃんなんかきらい!!」
パタパタと幼子が一哉から逃げていく。振り払われた手のやり場はなく、空を掴むだけ。
「嫌い、か……。姿が幼いとはいえ、あいつから言われたら、結構くるな……」
呟いて、一哉はその手をじっと見つめた。
一方、幼子はというと、買ってもらった小さなリュックサックにハンカチとティッシュとキャンディの入った小瓶などなどを詰め込んで、自分の半分以上の丈はあるピンクのカモノハシのぬいぐるみを抱きかかえる。
「いっしょにあそびにいこうね? カモノハシさんといっしょなら、むぎひとりじゃないもん」
リュックを背負うと、幼子はカモノハシを抱いたまま、玄関へと赴いた。
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