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一時的置き場
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 一時間半後、麻生から駅に着きそうだと言う連絡を受け、依織が駅まで向かった。駅に着くと、幼子を背負いながら、カモノハシのぬいぐるみを後ろでに抱える麻生が見えた。
「麻生、こっち」
「松川さん、悪い。ちび、車に乗るから、起きろ」
 そう言いながら、麻生が揺さぶると、「ん~」と軽く身じろいで、幼子が目を覚ました。
「お姫様はお目覚めかな」
「いおりおにいちゃん?」
「そうだよ、お姫さま。迎えに来たよ」
 そう言って、依織は麻生から幼子を受け取り、チャイルドシートへと。チャイルドシートに慣れているらしい幼子は再びすやすやと眠りに落ちた。そんな幼子のかたわらにカモノハシのぬいぐるみを置いてやる。
「お疲れ様、麻生」
「いや……。ちびは割と聞き分けがいいし。ダチのガキなんかやんちゃばっかでさ……」
 そう言いながら、車に乗り込んだ。


「で、何があったんだい?」
「御堂が一人じゃ危ないから外に出るなって、言われたらしい。で、ちびはカモノハシが一緒だから、一人じゃないって、飛び出したんだ」
「……確かにあれはこむぎちゃんのお気に入りの友達だね」
 瀬伊に友達だよ…とプレゼントされた大きなピンクのカモノハシのぬいぐるみは確かに幼子のお気に入りだけれども、そんな行動に出るとは一哉も考えなかったのだろう。小さくても、幼子はむぎなのだと依織も改めて思う。
「で、俺はダチが都合悪くなったんで、帰る途中でちびを拾ったんだ。バイクは学園に預けて来た」
「なるほど……。」
 バイクに幼子は乗せられず、一旦家に置いて行く選択も幼子が勝手に家を出たわけだから使えず。それが最善の選択だったのだろう。
「…で、ちびを連れて遊びに行ったんだよ」
「こむぎちゃんのことだから、はしゃいでたんだね」
 その様子が目に浮かぶのか、依織が目を細めた。
「で、一哉がこむぎちゃんの脱走にすぐに気付かなかった理由は?」
「あ~」
 流石に年長者。その鋭さに何とも言えない麻生であった。

「一哉がこむぎちゃんの脱走に気付いていたら、まず僕たちに連絡だろう?」
 当然とばかりに言葉を続けられれば、反論もできない。それだけ、一哉が幼子に対し、過保護であるから仕方ないが。
「ちび、遊びに行くなって御堂に頭ごなしに言われたんだろうな……。つい、『きらい』って、言っちまったんだって」
「それは……」
 幼子の癇癪のようなものだが、相手は小さくても彼らの大切な存在である鈴原むぎという少女で。本気でないとは言え、ぶつけられれば痛い言葉だ。
「嫌いっつったから、御堂は自分を嫌いになったから帰れないって、ちび言ってた」
「おばかさんだね、そんなことあるはずもないのに……」
「ああ、俺もそう言った……」
 そんな会話が続く中、ようやく車は家にたどり着いた。
「こむぎちゃん、起きて」
「ん~」
 チャイルドシートを外し、依織に抱っこされるがままの幼子は寝起きでぼんやりしている。麻生はカモノハシのぬいぐるみをもってやった。

 

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 夕方、帰宅した依織は一哉と留守番していたはずの幼子の姿がないのを不審に思った。
「あれ、一哉。こむぎちゃんは?」
「羽倉が一緒のはずだ」
「そうなのかい?」
 麻生も朝から出かけていたはずだ。その麻生が幼子と一緒にいるというところに引っ掛かりを感じる。
「こむぎちゃんと何かあったのかい?」
「外に出るなと言ったら、俺が目を離した隙に家を出たらしい。それを羽倉が見つけたんだ」
「……なるほど」
 どうして一哉が目を離してしまったのかが気になるところではある。幼子に関しては、この家で一番過保護であるはずの彼である。
「一哉……」
 それを問い掛けようとすると、タイミングがよいのか、悪いのか、一哉の携帯がなった。
「羽倉からだな……」
 ディスプレイに表示された名前を確認すると、一哉は通話ボタンを押した。

『御堂? 今から帰るから』
「今はどこにいるんだ」
「遊園地帰り。今、電車待ちで。悪いけど、メシがまだでデリバリー頼むなら、俺とちびの分も頼んどいてくれよ」
「食べてくればいいだろう?」
『ちび、疲れて寝ちまってるし。起こすのも可哀想だから。で、俺はちびとぬいぐるみ抱えてるから、買って帰れない』
「寝てるのなら仕方ないな……。そこからなら、一時間半だな。適当にたのんでおく」
 そう言って、携帯を切ろうとすると、
「一哉、駅に着いたら、迎えに行くって麻生に伝えて」
と、依織に制された。
「いくら麻生が頑丈でも寝ているこむぎちゃんを抱えてずっと電車は辛いだろうし」
 依織の言葉に一哉も納得し、その旨を麻生に伝えると『助かる』との返事を得て、電話を終えた。
「すまないな、松川さん……」
「可愛いお姫様のためだからね」
 あくまでも麻生のためではない辺りが依織らしい物言いだと一哉は思った。

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 その後もいくつかの乗り物に乗ったら、夕方になってくる。閉園時間が近づいてきていた。
「ちび、最後に何がいい?」
「かんらんしゃ! いつも、さいごはかんらんしゃなの」
「……そっか」
 いつも…戸言うのは、幼子にとっては家族との遊園地の時間。胸が痛くなるのを抑えて、幼子を連れて観覧車へ。
「たかいの~」
 観覧車が上がっていくのをきらきらとした目で幼子は追いかける。
「むぎのおうち、みえないかな~」
「ちょっと、ここからじゃ見えないな……。でも、ほら。さっきの駅とか見えるだろ?」
「うん」
 はしゃぐ幼子に今のこの時間が楽しいものとして、記憶の片隅に残ってくれればいい、そう麻生は思った。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
 観覧車から降り、麻生がそう言うと、幼子の足が止まる。
「ちび?」
「かずやおにいちゃん、むぎのこと、きらいになったから、むぎ、かえれない……」
「はぁ? んなわけないだろ?」
 一哉が幼子に対して過保護なのは、それだけ大切だからだ。嫌うはずがあるわけな
い。だが、幼子はふるふると首を振る。
「ちび?」
「むぎ、かずやおにいちゃんにきらいっていったの……」
「え……?」
 ポツリと呟いた幼子をカモノハシのぬいぐるみごと麻生は抱き上げる。
「どうしたんだ? ちびがそんなことをいうくらいなんだから、何かあったんだろ?」
 幼子を追い詰めないように言葉を選んで、問い掛ける。
「かずやおにいちゃん、おそとにでちゃだめっていったの。むぎ、なんでだめなのかわからないの。だから、いっちゃったの。『きらい』って……」
「……なるほど」
 仕事があるから、家の中でなら、むぎの様子に目を配れるが、外だとそういうわけにはいかない。まして、一人で出たいだなんて許すはずがない。
「むぎがきらいっていったから、かずやおにいちゃんもむぎがきらいになるの……」
 大きな瞳からは今にも涙がこぼれ落ちそうで。さっきまでの楽しそうだった顔が一気に曇ってしまった。
(……だから、御堂の様子がおかしかったんだな)
 麻生は麻生でようやく納得がいった。幼子が一人で出ていってしまったことに一哉が気付いてなかった様子だった理由を。
 小さい子供の、感情が高ぶって思わず言ってしまった言葉だ。本気であるはずがないのを一哉だってわかってはいるだろう。だが、それでも、言われてしまえば、互いに距離を置こうとする。一哉も幼子が落ち着いたら…と考えていたのかもしれない。その隙に外に飛び出されてしまったが。
「おかあさん、いってたの。むぎがきらいになったら、むこうもむぎがきらいになるって……」
 ぎゅう…とカモノハシのぬいぐるみを抱き締める幼子に麻生は優しく言った。
「大丈夫、御堂はちびを嫌いにならねえよ」
「ほんとう?」
「ちびは御堂を本当に嫌いになったわけじゃないだろ?」
「うん……」
「だったら、御堂は嫌いになったりしない。兄ちゃんが保証する」
 麻生の言葉に幼子は不安げな瞳のまま。
「帰ったら御堂に謝ろうな。兄ちゃんも一緒にいてやるから」
「うん……」
 幼子は麻生の言葉に小さく頷いた。
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