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一時的置き場
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 トントンと小さく胸をたたく音と軽い重みにに誘われるように僕は目を覚ます。見知らぬ天井に僕はまだ自分が夢を見ているのだろうと思った。昨日は愛しい恋人を腕に抱いて眠ったはず。だから、見知らぬ天井があるはずがない。夢の中で夢を見ていると自覚するのも、ある意味替わった話だが、こういうこともあるのだろう。
「……たん」
 僕の胸の上に有った重みの正体はどうやらこれだったらしい。あどけなくのぞき込んでくるのは赤ん坊をようやく終えたばかりらしい、幼児の姿。ブラウスとジャンパースカート姿。スカートの下はふっくらとふくらんだカボチャパンツ。それがなんだか可愛らしい。
「こむぎちゃん?」
 一瞬、その名を呟いたのは腕の中に一晩離さずに眠った恋人にあまりにも面差しが似ていて、彼女の幼い頃の姿の少女に重なったから。けれど、そうでないことにすぐに気づく。彼女の髪は茶色で柔らかいけれど、目の前の子供の髪は赤みがかった茶色でさらさらした髪。どちらかと言えば、僕の髪質に似ている。
「……まさか?」
 そこまで思い至って、これが改めて夢であることを僕は確認し、そして幸せになる。彼女によく似た小さな女の子。髪の質や色は僕に似ていて。それが意味するところは一つ。この子はいつか神様が僕たちにくれる宝物なのだろう。
「とーたん」
「どうしたのかな?」
 僕は胸の上の子供を抱きかかえるように起きあがると、子供は嬉しそうに声を上げ、僕に甘えるように抱きついても来る。こむぎちゃんは甘えん坊だったけれど、そう言うところも彼女に似たのだろうか。
「おかあさんは?」
「かーたん、まんま……」
 朝食の準備をしているらしい彼女が相手をしてくれないから、寂しがって、僕の所にきたのかもしれない。
「じゃあ、お母さんの所に行こうか?」
 そう言って、僕がベッドから離れようとしたら、そっと伺うようにドアが開いた。 
「あ~、やっぱりいた!」
「父さん、起きちゃってるし……」
 ドアが開いた時とは違い、途端ににぎやかになる。小さい頃の僕のとも言うべき少年が二人。この子たちも僕の子供なんだろう。
「ほら、お父さんはお仕事が終わって疲れてるんだから、入っちゃ駄目って言っただろう?」
 年下の方の少年がそう言って、ベッドまで歩いてきて僕に抱きつく子から離そうとする。
「や、にいたん!」
 ますます僕にしがみついて離れない。頑固なところも彼女に似たらしい。僕が疲れているだろうから…と僕を気遣うためにこの子を僕から離そうとする彼もまた彼女の教育の賜物なのだろう。
「ちょっと、変わって」
「兄さん?」
 二人の様子を見かねたのか、年長の方の少年はにっこりと笑って僕の腕の中の子供に微笑みかけると、少しばかり警戒心が解けたらしい。僕から見ると、どこか含んだ笑顔に見えるのは…自分によく似た子供だからだろうか。僕もよく使うあの微笑、だ。
「父さん、暴れるかもしれないけど、ごめん」
 そう言うなり、彼は幼子をくすぐりだした。
「や~」
 途端にくすぐったがりもがくが僕に抱きつく腕の力が緩んだ。その隙を狙って、彼は僕から引き離した。
「流石だね……」
「お母さん直伝だから」
 手慣れた手つきでむずがる幼子をあやす。…何というか、自分の子供時代を考えるとあり得ない光景。けれど、多分、彼は顔も中身も僕に似ていると思う。一方、弟らしい彼は中身は結構彼女よりらしい。
「あ~。みんな、ご飯が出来たのにいないと思ったら、ここにいたんだ~」
 その声に僕はとっさに声の下方向に顔を向けると、そこには僕が知る彼女より、大人びた彼女の姿があった。左の薬指には銀色の輝き。僕の薬指にも同じ輝きが存在している。
「母さん、原因はこっち」
 そう言って、未だに僕の所に来たがってむずがる幼子を指さす。
「お父さんが久しぶりに帰ってきたのが嬉しかったんだね~」
 そう言って、幼子に話しかける彼女は母親の顔。僕がまだ知ることのない表情。けれど、いつか僕が知るはずの表情。
「朝ご飯が出来たよ? おみそ汁が冷めちゃうから、早くダイニングに行って」
「や~、とうたん!」
 むずがる幼子の顔をのぞき込んで、彼女は囁きかける。
「まんま、いらないの? イチゴもあるんだよ? イチゴ、お母さんやお兄ちゃんたちが食べていいの?」
「や、まんま……」
 彼女の言葉にあきらめたように大人しくなってしまう。僕への執着はどうやら、イチゴへの魅力に負けたらしい。こういう時、僕は父親として落ち込むべきなのだろうか。
「ごめんね、連れてってくれる?」
「わかってる、勝手に始めとくから」
 幼子を抱えたまま、僕の部屋を出て行った三人を見送ると、彼女は僕の方を向いてくれる。
「ごめんね、地方公演から戻ってきて疲れているのに、あの子が起こしちゃって……」
「かまわないよ。かえって、元気をもらったくらいだよ。だから、僕もご飯を食べるよ。家族は一緒にご飯を食べなきゃ…だからね」
 僕の言葉に彼女は嬉しそうに頷く。そう言えば、あの家に住んでいた衣みんなで食べることを実践させたのは彼女の存在が有ってのことだった。
「うん。依織くんの分もあるよ。起きたら暖められるように準備はしてたの。じゃあ、顔を洗ったら、ダイニングに来てね?」
 そう言って、僕の部屋を出ようとする彼女の腕をつかむ。
「エ?」
「おはようのキスがまだ、だろう?」
 まぁ、時が流れても僕はこれを忘れるはずがないと確信はしている。その証拠に彼女はそっと瞳を閉じて、僕のキスを待っている。
「おはよう、奥さん……」
「おはよう、あなた……」
 愛しい彼女と交わすキスは幸福に満ちている。僕はその幸福に酔いしれていた……。 



 差し込んでくる朝日に誘われて、僕は瞳を開ける。見慣れた天井が目に映る。どうやら、夢は終わり、現実に帰ってきたらしい。腕の中には僕の愛しい恋人が安らかな寝息を立てて眠っている。その安らかな寝顔を見ていると、僕の中に限りない幸福感があふれ出して。
「いつ、叶うのだろうね……」
 今はまだ僕が見ただけの夢。けれど、それはきっといつか実現する未来。こんなにも彼女を愛しいと思う僕がいて、君が僕の側にいる限り、きっと叶う夢だろう。
「ん……」
 僕と同じように朝日に誘われたのか、数回身じろいで、彼女が目を覚ます。
「おはよう、お姫さま」
「おはよう、依織くん」
 夢の中の僕らと同じようにおはようのキスを交わして、幸せな気分に浸って。
「ねぇ、どうしたの?」
「ん?」
「依織くん、とっても幸せそうな顔してる……。なんだか、あたしも幸せな気分……」
 そう言って、君は幼い仕草で僕の頬を包み込んでくれる。
「ああ、夢を見たんだ」
「夢?」
「うん、とても幸せな夢だったんだ……」
「そうなんだ……。正夢になるといいねぇ……」
 何気ない君の言葉。ねぇ、僕がこの夢を話したら、君はどんな顔をするだろう。今の僕のように幸せな気分になってくれるだろうか? それとも顔を真っ赤にさせて、何とも言えない表情をするだろうか? けれど、君はきっと叶えてくれるだろうから。
 いつか、僕たちの所にやってくる宝物たち。君がいなければ、叶わない夢。それがどれほど幸福な夢なのかを……。
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「皇くんもやっぱり、一人で着物が着れるんだよね」
 依織を訪ねてきた皇にお茶を持ってきたむぎだったのだか、依織はかかってきた携帯で話すために席を外していて。手持ち無沙汰そうな皇にふとかねてから思っていたことを聞いてみた。
「そりゃあ、な」
「すごいよね」
「そうでもないさ、慣れの問題だろ?」
 依織や皇には馴染んでいた世界だが、むぎにはすごいとしか思えない。
「あたしは着付けできないもん。やっぱり習った方がいいのかなぁ……」
「習っても、着ないままだと忘れるらしいぜ。着る機会を持つことが大事なんだ」
「機会かぁ……」
 日舞等の趣味があるならともかく、一般の女子高生にそれほど着物を着る機会があるはずもなく。
「着物が着たいのか?」
「成人式は振り袖着たいもん。自分で着付けられたら、美容院に行かなくてもいいかなぁって思って……」
 美容院の着付けと髪のセットはかなりかかると聞いたことがあるので、自分で出来るのなら、それに越したことはない、それがむぎの考えだ。そんなむぎに呆れたように皇は言った。
「着物なら、依織に着付けてもらえばいいだろう? 下手な美容師に頼むより確実だし」
「迷惑じゃないかなぁ……。あたし、甘えてばかりだし……」
 むぎの遠慮がちな態度は好ましいものだと思う。依織がむぎを愛するのはこういうところなのだろう、と。
「でも、成人式に振袖が切れるかどうかはわからないと思うが……」
「どうして? 新しく買えなくても、いざとなればレンタルだってあるし。あたしだって、成人式に着物着たいし」
 その気持ちはわからなくはない。けれど、振袖は未婚の独身女性が着るもので。むぎが成人式を迎える頃に独身であるかどうかは依織次第なのだ。
「あたしには振袖は似合わない?」
「いや、そういう問題じゃない……」
 自分が言葉が足りないことはわかって入る。ゆえにどうむぎに納得してもらうか、正念場であると、皇は思った。 
「そんな話を皇としていたのかい?」
 電話を終え、部屋に戻ると困ったような顔をしている弟と顔に疑問いっぱいと言う顔をする恋人の姿が目に入った。依織が戻ってきたのを神の救いとでも言うように皇は『庵ととにかく話してみろ』と言って、話を打ち切らせた…と言うか、依織が戻ってきたのを確認したむぎが『ああ、皇くんは依織くんに用事だったよね? あたし、席外すね』と部屋を出たのだ。そして、こうの帰宅後、何が起こったのかを聞いてみたら、着物の話だったというわけである。
「あたし、似合わないの?」
「そんなことはないと思うけれど? 僕が見繕ってあげるから」
「いいよ。そんな。高いし。お母さんが着ていた着物を着てみたかったんだよね……。もちろん、それとは別に振袖も着たいけど」
 少しだけ感傷的な顔をするむぎの頭を依織は優しく撫でてやる。
「じゃあ、僕が教えてあげるよ。少しずつ覚えていけばいい。着物デートもしよう?」
「え? でも、依織くんの手を煩わせてくないもん……」
 色々と忙しい恋人の手を煩わせたくないというむぎの気持ちは可愛いけれど、それはそれで複雑ではあるのだ。自分ひとりで何とかしようとして、時には恋人である自分を頼って欲しいと。
「駄目だよ? もし、誰かに教えてもらうんなら……」
「なら?」
「脱がせるのを僕専用にしてしまうよ?」
「……!!」
 とんでもないことをさらりと言う依織ではあるが、ある意味彼は実力行使をしかねない。
「……わ、わかりました」
 固まりつつ頷くむぎに依織は満足そうに笑みをこぼした。

「どうして、あたしが成人式に着物が着るのが無理かもしれないなんて、皇くんはいうのかなぁ……」
「そうだね、皇なりに先を考えすぎたのかもしれないね」
「先を?」
 何のことかわからず、きょとんとむぎは首を傾げる。そんなむぎに依織はヒントを与えてみることにした。親切心からではなく、むぎがどんな反応を示すかを見てみたかったのだ。
「振り袖は未婚女性の着るものだからね……」
「うん、そうだよね。あたしね、いつかお姉ちゃんが結婚する時にも振り袖が着たいんだ~」
 無邪気に姉の将来に関しても行ってくれるむぎはその意図がどうも伝わっていないようだ。依織は軽く苦笑する。
「まぁ、それは安藤次第だけど? でも、僕としてはあまり待たせられるのも困るのだけれども?」
「え?」
「君の振り袖姿は愛らしいとは思うけれど、少しでも早く僕の奥さんになってもらって、名実共に僕だけの君にしたいとも思うんだ」
「……あ」
 そこまで言われて、ようやく皇の言いたかったことが理解できた。つまりは二十歳を迎える前に依織がプロポーズして、むぎがそれを受け入れ、結婚すれば、未婚ではなくなる。当然、成人式にも、苗の結婚式にも振り袖は無理と言うことだ。
「……あの、あたし、依織くんのお嫁さんになっていいの?」
 真っ赤になりながら、そう問うてくるむぎ。その愛らしさに依織はむぎの手を取り、そっと口づける。
「君じゃなければ、困るのだけれども?」
「……じゃあ、その。成人式が終わるまで待ってね? それだけはお願い」
「お姫さまの望なら、仕方ないね。代わりに、僕が精一杯君を綺麗にするからね? それは妥協できないから」
「……うん」
 恥ずかしさにうつむくむぎをそっと依織はそっと抱きしめた。

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 夜明けの海を見に行こうか、家政婦時間の合間に誘われた。一哉くんは出張中、明日はお休みだから、他の二人も朝は遅くでいいと聞いている。そのせいもあって、あたしはすぐに承諾した。あ、もちろん、朝ごはんの準備は忘れない。だって、お仕事だもん。


 お使いで夜中に出ることはあっても、みんなが寝ているような時間に出て行くことなんて滅多にないから。軽く仮眠を取ったこともあり、テンションは高めのあたし。
「海に着くまでは寝ていてもいいのだけれど?」
「へーき」
「まぁ、僕もお姫さまが僕の相手をしてくれる事は嬉しいけどね」
 そう言って、意織くんが笑ってくれて。あたしは依織くんの運転の邪魔にならない程度におしゃべりをして、この深夜ドライブを楽しんでいた。
 そうして、たどり着いたのはまだ夜の海。昼間に見る海とは違い、飲み込まれそうな印象。
「早く夜が明けないかなぁ……」
「そうだね」
「依織くんが連れてきてくれるってことは、朝日がすごく綺麗だとか、そういうことでしょう?」
 いつだって、あたしをより気遣ってくれるのが依織くん。けれど、依織くんの返事は違っていた。

「この夜の海は以前の僕の心そのものだったんだよ」
「依織くんの心?」
 問い返すあたしに依織くんは言葉を続けた。
「月のない夜は特に、だけど。暗い海は全てを拒むようで。君にであった頃もそうだった」
 出会った頃の依織は優しかったけれど、内面を見せることはなかった。踏み込まれることを拒んでいたようにも思える。
「明けぬ夜などくるはずもないと思ってもいたよ。一哉が女の子を拾って来て家政婦にすると言い出すまでは……」
「それって、あたし?」
「そうだよ。普通なら無理だと諦めてしまうところを君は諦めなくて。君は自分の手で運命を引き寄せたのだから」
「大袈裟だよ、依織くん」
 あたしは慌てて否定する。あたしがあの事件を解決で来たのはあたしだけの力じゃない。皆の協力があったからこそだ。そんなあたしの頬を依織くんは両手で包みこむ。
「僕たちを協力させたのは、君の優しさや強さがあったからだよ。僕に進む勇気をくれたのも……」
 そして、優しいキスをくれる。じゃれあうように、深く求め合うように。言葉の代わりに、キスを交わす。そうして、いつしか、夜は明けて行って。
「わぁ……」
 朝日の光が生み出すグラデーション。何て言えばいいんだろう。あたしは息を呑むしかない。
「深い闇に差し込む光……。俺にとっての君だよ……」
 こんなに綺麗な光景をもたらす光があたしにたとえられるって何だかおこがましいけれど、依織くんにとってあたしがそういう存在でいられることが嬉しいと思った。 

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