一時的置き場
Category :
フルキスSS
「……」
家事と慣れない秘書の仕事に疲れているのか、リビングですやすやと眠ってしまっているむぎの姿に一哉は軽い溜め息を吐く。
「こら、馬鹿。仕事中だろう?」
声を掛けてみても、軽く寝返りをうつだけで、起きる気配はない。
「男ばかりの家で無防備だろうが……」
一哉の言葉は眠っているむぎには届かない。もっとも、起きていても、むぎ本人に笑い飛ばされるだろう。そんなことはあるはずがない…と。
「前とは状況がちがうんだぞ?」
事故の怪我から、思うとおりには動けない身体では、抱き上げてやることもできず、もどかしい。身体が痛まないように気をつけながら、一哉は眠り続けるむぎの側に膝を突く。
「女には困ってないのは変わらないが、お前に飢えている男は少なくともここにいるんだぜ?」
以前の同居の時とは違うのだと、そう伝えてみても、夢の中を漂う少女には伝わらない。幸福な夢を見ているのか、穏やかに微笑んでさえいて。
「バーカ」
そう呟きながらも、一哉はむぎの頭を優しく撫でてやるのであった。
家事と慣れない秘書の仕事に疲れているのか、リビングですやすやと眠ってしまっているむぎの姿に一哉は軽い溜め息を吐く。
「こら、馬鹿。仕事中だろう?」
声を掛けてみても、軽く寝返りをうつだけで、起きる気配はない。
「男ばかりの家で無防備だろうが……」
一哉の言葉は眠っているむぎには届かない。もっとも、起きていても、むぎ本人に笑い飛ばされるだろう。そんなことはあるはずがない…と。
「前とは状況がちがうんだぞ?」
事故の怪我から、思うとおりには動けない身体では、抱き上げてやることもできず、もどかしい。身体が痛まないように気をつけながら、一哉は眠り続けるむぎの側に膝を突く。
「女には困ってないのは変わらないが、お前に飢えている男は少なくともここにいるんだぜ?」
以前の同居の時とは違うのだと、そう伝えてみても、夢の中を漂う少女には伝わらない。幸福な夢を見ているのか、穏やかに微笑んでさえいて。
「バーカ」
そう呟きながらも、一哉はむぎの頭を優しく撫でてやるのであった。
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フルキスSS
「そう言えば、理事長って、あたしの友達のお父さんと同じ年なんだよね……」
「また、お前は唐突に……」
「あ、できちゃった婚じゃないんだよ? 高校から付き合ってて、お父さんが卒業して、就職してから結婚して、すぐに友達が授かったたんだって。友達の父方のおじいちゃん、結婚式の時、号泣してたって……」
「それで?」
東條葵の秘書として、彼の元で働いているむぎはその日の彼の同行を一哉に報告する。今日も一哉に色々と報告しているうちにそんな会話になったのだ。
「いや、理事長と話してて、初詣での話から、干支の話になったのよ。ほら、十二支ごとのお守りが売ってるから」
「で?」
「一回り違うから、干支は一緒ですねって言われて、ちょっと焦っちゃって。あたしの本当の年と一回りだったら、28歳でしょ。23歳って言ってるから、そう言う風に言われたんだってなかなか気付かなかったの。…で、友達のお父さんと同じ年だなぁって……」
「まぁ、いいが……。変なところでぼろを出すなよ」
一哉の言葉にむぎも神妙に頷く。
「うん、理事長と初詣でに行く時は23歳の年のお守り買う……」
「……ちょっと待て。なんでそう言う話になる」
声のトーンが若干変わった一哉にきょとんとしつつ、むぎは答える。
「あたしは喪中だから、お参できないけど、理事長、あたしの分もお参りするから、行くことがあれば、付き合ってほしいって言われたの」
何でもないことのようにむぎは答えるが、一哉は眉間に皺を寄せる。
「東條のプライベートにそこまで付き合う必要はないと思うが」
「そうなのかなぁ?」
うーんと首を傾げるむぎであるが冗談じゃない…と一哉は思う。まだ、12月に入ったばかりで、正月の誘いを匂わされているのだ。クリスマスにはどうなることか…とも考える。
(こいつが鈍いことが不幸中の幸いというか……)
自分に向けられる好意に全く気付きもしない。理事長に予定を埋められる前に何とかしようと一哉は決意した。
「また、お前は唐突に……」
「あ、できちゃった婚じゃないんだよ? 高校から付き合ってて、お父さんが卒業して、就職してから結婚して、すぐに友達が授かったたんだって。友達の父方のおじいちゃん、結婚式の時、号泣してたって……」
「それで?」
東條葵の秘書として、彼の元で働いているむぎはその日の彼の同行を一哉に報告する。今日も一哉に色々と報告しているうちにそんな会話になったのだ。
「いや、理事長と話してて、初詣での話から、干支の話になったのよ。ほら、十二支ごとのお守りが売ってるから」
「で?」
「一回り違うから、干支は一緒ですねって言われて、ちょっと焦っちゃって。あたしの本当の年と一回りだったら、28歳でしょ。23歳って言ってるから、そう言う風に言われたんだってなかなか気付かなかったの。…で、友達のお父さんと同じ年だなぁって……」
「まぁ、いいが……。変なところでぼろを出すなよ」
一哉の言葉にむぎも神妙に頷く。
「うん、理事長と初詣でに行く時は23歳の年のお守り買う……」
「……ちょっと待て。なんでそう言う話になる」
声のトーンが若干変わった一哉にきょとんとしつつ、むぎは答える。
「あたしは喪中だから、お参できないけど、理事長、あたしの分もお参りするから、行くことがあれば、付き合ってほしいって言われたの」
何でもないことのようにむぎは答えるが、一哉は眉間に皺を寄せる。
「東條のプライベートにそこまで付き合う必要はないと思うが」
「そうなのかなぁ?」
うーんと首を傾げるむぎであるが冗談じゃない…と一哉は思う。まだ、12月に入ったばかりで、正月の誘いを匂わされているのだ。クリスマスにはどうなることか…とも考える。
(こいつが鈍いことが不幸中の幸いというか……)
自分に向けられる好意に全く気付きもしない。理事長に予定を埋められる前に何とかしようと一哉は決意した。
Category :
こむぎSS
「ちび、ほら」
そう言って、小さな焼芋を麻生は幼子に手渡す。
「あさきおにいちゃん、ありがとう」
嬉しそうに幼子は焼芋にかぶりつく。近所の公園で遊んだ帰り道、『石焼芋~』の牧歌的な声。小腹もすいていたので、購入とあいなった。
「おいしいの♪」
「だな」
焼きたてのサツマイモはほくほくしていて美味しい。少し肌寒くなった季節には暖かくてちょうどいい。
「おにいちゃんたちはたべないの? おみやげにしなかったの?」
「……」
麻生が購入したのは自分の分と幼子の分のみで。どうして、他の同居人たちに買わなかったのかと聞かれて、麻生は答えに詰まる。ラ・プリンスと焼芋、あまりにもミスマッチすぎて、シュールを通り越してしまっている。
「兄ちゃんたちは…食ったことがないんじゃねえのかな」
「そうなの?」
一哉や依織はその家柄から何となく想像がつくし、瀬伊も皮を剥くのが面倒とか言い出して、食べない気がする。
「こんなにおいしいのにね……」
そう言って、焼芋をかぶりつく幼子。帰宅してから、食べないのかと尋ねて回る光景が目に浮かび、麻生は何とも言えない表情になった。
そう言って、小さな焼芋を麻生は幼子に手渡す。
「あさきおにいちゃん、ありがとう」
嬉しそうに幼子は焼芋にかぶりつく。近所の公園で遊んだ帰り道、『石焼芋~』の牧歌的な声。小腹もすいていたので、購入とあいなった。
「おいしいの♪」
「だな」
焼きたてのサツマイモはほくほくしていて美味しい。少し肌寒くなった季節には暖かくてちょうどいい。
「おにいちゃんたちはたべないの? おみやげにしなかったの?」
「……」
麻生が購入したのは自分の分と幼子の分のみで。どうして、他の同居人たちに買わなかったのかと聞かれて、麻生は答えに詰まる。ラ・プリンスと焼芋、あまりにもミスマッチすぎて、シュールを通り越してしまっている。
「兄ちゃんたちは…食ったことがないんじゃねえのかな」
「そうなの?」
一哉や依織はその家柄から何となく想像がつくし、瀬伊も皮を剥くのが面倒とか言い出して、食べない気がする。
「こんなにおいしいのにね……」
そう言って、焼芋をかぶりつく幼子。帰宅してから、食べないのかと尋ねて回る光景が目に浮かび、麻生は何とも言えない表情になった。