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一時的置き場
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「ち、馬鹿馬鹿しい……」
 呟いて、九条は携帯を手にするが、何故か使う気にはなれない。ふと、脳裏をよぎるのは、自分の写真を撮って満足げな顔をしていた幼子の姿。
(ああいう顔も似てんのかよ……)
 幼子のあの顔がバケツの水を飲み干したいつかの鈴原むぎの顔が過ぎった。
「鈴原センセー、俺、さぼってんだぜ……。いつまで放っとく気だよ……。さぼんなって、バケツの水飲んだの、あんただろうが……」
 そう呟いた九条は、それを振り払うかのように携帯をポケットにしまいこんだ。


「かずやおにいちゃん、くじょーくんのしゃしん♪」
 携帯の画面に写る九条を満足げに一哉に見せる幼子に何とも言い難い顔をする一哉。人懐っこいとは言え、九条にも懐いてしまった。あの九条が幼子の面倒を見ていたと言う事もなかなかに信じがたいというのに。
「かずやおにいちゃん、おこってるの?」
「え?」
「おかお、こわいの……」
 知らずに眉間に皺を寄せていたらしい。
「怒ってない」
「なら、よかったの。かずやおにいちゃんのしゃしんとってもいい?」
「あぁ。でも、あんまり撮りすぎると電池がなくなるからな。俺たち以外は撮るんじゃないぞ」
 そう釘をさしておく、。人懐っこい幼子が写真を撮るのに夢中になって予期せぬ行動を撮られぬように…ということと、自分たち以外を見ていられるのは、少しばかり面白くないの、と。
「わんわんも?」
「少しだけだぞ」
「うん♪」
 流石にマキシモ号には許すことにすると、幼子は嬉しそうに笑って携帯を一哉に向ける。仕方ないな、と思いながらも、自然と笑顔を浮かべていて。幼子はその笑顔を携帯で撮り、満足げに笑った。 


FIN

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「むぎ、マキシモ号のところに行くぞ。探しているはずだからな」
「うん」
 一哉の言葉に幼子はコクリと頷く。抱き上げられたその腕の中が世界で一番安全な場所といった顔をして。先程までは自分と二人だけで、幼子は九条だけを頼っていたのに。微かな喪失感が九条によぎる。
「あ、くじょーくん」
「何だよ?」
 自分でもよく理解できない感覚に囚われていた九条は幼子の呼び掛けに反応したものの、その次の行動は読めなかった。
 カシャ!
「あ?」
「とれた~」
 一哉の腕の中で嬉しそうに携帯を手にする幼子。一哉も唖然としている。
「くじょーくんのしゃしんとれたの♪」
「そーかよ……」
 満足げなその顔に何も言う気にはなれない。
「じゃあな」
 とりあえずはここから立ち去るだけだ。本来は授業をさぼって、次のパーティーの段取りだのをとるはずだったが大幅に予定が狂ってしまった。
「あ、くじょーくん!」
「……」
 幼子の呼び掛けにも振返らない。御堂一哉という、幼子の本来いるべき場所に戻ったのだ。これ以上関わることもない。
「くじょーくん、ありがとう~」
「……馬鹿」
 振り返らなくてもわかる。満面の笑顔で自分の背中に向かって精一杯声を上げているのだろう。
「もう、迷子になるなよ。拾ってやれるとはかぎらねぇからな」
 振り返らずにそう告げると、九条はそのまま去って行った。一哉の腕の中で幼子は九条の背中が見えなくなるまで手を振った。
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「むぎもしゃしんとりたい~。くじょーくん、おしえて」
 そう言って、幼子は九条に手を伸ばす。「面倒くせぇなぁ……」
とは言え、メールを送った相手である一哉がすぐに来るとは思えない。しばらくの退屈しのぎだと自分に言い聞かせた。
「ここを押して見ろ」
「うん。あ、えがかわったの!」
「で、こっちを押してみろ」
「うん」
 九条にいわれるままに操作していくと、カシャっとシャッター音がなる。
「とれたの」 幼子は嬉しそうに九条を見上げてくる。「むぎ、くじょーくんとる!」
 目を輝かせながら、幼子は九条を見上げ、携帯を構えるが、しばらくして困った顔をする。
「くじょーくん、とおいの……」
「遠い?」
「おっきくとれない……」
「なるほど……」
 幼子の背丈では、携帯で九条の姿を大きく撮るには無理があるらしい。
「諦めろ」
「やだ~。むぎもくじょーくんをとりたいの~」
 一生懸命背伸びをして九条を撮ろうとするその姿も彼女を思い起こさせる。
(大きくなったら、ああなんのかよ……)
 何となく複雑な気分になる。そんな九条に幼子は唐突に言い出した。
「くじょーくん、だっこ」
「……は?」
 その言葉は九条を一瞬硬直させるのに十分な衝撃を与えた。
「むぎ、くじょーくんのしゃしん、とれないの。だから、だっこ」
 精一杯背伸びをしても届かないのなら、抱っこしてもらう。幼子なりの理屈らしい。
「あのな……」
 九条が幼子の目線に合わせてやるか、抱っこしか方法はないが、正直、自分が幼子を抱っこする光景は想像したくない。
「だめなの?」
 瞳を曇らせる幼子にどうしたものかと思案に暮れる。それ故、次の瞬間に聞こえた声は九条に撮っては救いであったのかもしれない。
「むぎ!」
「かずやおにいちゃん!」
 名前を呼ばれた幼子は嬉しそうに振り返る。九条も視線をむけると、息せききった御堂一哉の姿がそこにあった。
(早ぇ……)
 メールを送ってから10分もたっていない。しかも、今は授業時間である。まさか、こんなに早く来るとは思っていなかった。
「九条……?」
 一方、一哉の方も幼子と共にいる九条に戸惑った顔をしている。
後にも先にも、御堂一哉のこんな顔を見ることないだろう…と九条の方は冷静になっていた。
「おい、お迎えが来たぜ?」
「くじょーくんがかずやおにいちゃんをよんでくれたの?」
「ああ」
 九条にすっかり懐いているらしい様子にも驚きを隠せていないようだ。
「むぎ、こんなところでどうしたんだ? マキシモ号と一緒じゃなかったのか?」
 それでも、冷静な口調で幼子に語り掛けるのは流石というべきか。
「むぎ、おとこのひとにおいかけられたの……。逃げてたら、わんわん、まいごになったの……」
 迷子は幼子自身だろう…と、内心で九条はつっこんでみる。その時のことを思い出したのか、幼子は泣きそうな顔になっている。口に出すほどは不謹慎ではない。「不審者が入ったのか……?」
「御堂。それ、山本らしいぜ。そいつ、鈴原センセーとそっくりじゃん」
「そうきたか……。こいつは小さいから大丈夫だと思っていたんだが……」
 九条の言葉に一哉は大きく溜め息をついた。「九条、こいつが世話になったな」
「別に世話した覚えはねえよ」
「だが、おまえがここに来なければ、むぎは一人で泣いたままだったからな……」
「へぇ……。生徒会長が授業をさぼる生徒にそんなことをいうわけ?」
 敢えて、挑発めいた口調になる九条に対し、一哉は冷静なままだ。
「結果論だとしても、こいつが一人で泣いているよりずっとマシだからな……」
「……随分、ご執心じゃねぇの?」「さぁな。まぁ、ここでお前といつまでもいても仕方ない」
 そう言うなり、一哉は幼子に両腕を開いた。
「ほら、むぎ」
「だっこ?」
「ああ」
 うなずいた一哉に嬉しそうに幼子が駆け寄ると、一哉は軽々とその小さな身体を抱き上げた。
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