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一時的置き場
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「ゆき~♪」
 空から舞い降りて来る雪に、幼子は庭に出ておおはしゃぎする。
「まるで子犬だな……」
 その様子を苦笑混じりで見つめる一哉に依織はクスリ、と笑う。
「童謡にも歌われているからね。まぁ、この家の猫はコタツじゃなく、ピアノ室に籠ってるけど」
「猫に失礼だぜ、松川さん」
「じゃあ、ケットシーくらいにしようか?」
「それなら、まだいいな」
 本人がいないから好き放題である。
「しかし、周囲を見ずにあんなに走り回ってたら……」
 転んでしまわないか…と言いかけた途端に、タイミングよく幼子はバランスを崩して転んでしまう。
「子供は重心のバランスが悪いからね……」
 困ったように笑いながら一哉に視線を向けた、依織であったが、
「むぎ!」
と、一哉は外に出てしまっていた。気がつけば、転んで泣きじゃくる幼子を不器用な手つきであやしている。
「ホットミルクとコーヒーが必要みたいだね」
 そう呟いて、依織はキッチンに向かった。

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「寒……」
 家の中や学園内は冷暖房が聞いているが、通学途中はそうもいかない。
「早く帰ろ……」
 自然と家路に戻る足の速さも加速して行く。
「ただいま~」
「お帰り、むぎちゃん。寒かっただろう? ミルクティーを入れてあげるから、リビングで待っていなさい」
「うん、ありがとう、依織くん」
 家に着くと、そう言って依織が迎えてくれた。三年生はこの時期は自由登校であり、依織も受ける授業がないため、自宅にいたのだ。むぎは急いで自室に戻り着替えてからリビングに向かった。
「はい、お姫さま」
 リビングにむぎが入ると、タイミングよく依織がミルクティーを出してくれる。
「あったかい~。生き返る~」
 一口飲んで、むぎは感嘆の溜め息をつく。
「ありがとう、依織くん♪」
「お姫さまが喜んでくれたのなら何よりだよ」
 そう言って、依織はニッコリと笑い、頭もなでてくれる。
「今日はお鍋にしようかなぁ……」
 寒い日には暖かい食べ物が一番だ。鍋はそのもっともたる物だとむぎは思う。
「買い物に行くのなら車を出すよ」
「いいの?」
 依織の申し出は願ってもないことだが、やはり遠慮が出てしまう。そういうところがむぎの美点だと依織は思うが、二人で買い物というシチュエーションは依織にもおいしいのだ。
「かまわないよ。お姫さまを寒空に放り出すなんてことはできないし」
「ん~。じゃあ、依織くんの食べたいお鍋にするね」
 むぎなりの感謝の現れに依織は微苦笑を浮かべつつ、他の住人が帰宅する前にと時計に視線を向ける。
「急がないとスーバーが混んでしまうから、むぎちゃん支度しておいで」
「うん」
 足取り軽く自室に戻るむぎを見送り、依織は車を出しにガレージに向かった。
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「みんな、少しずつでいいから食べてね」
 そう言って、むぎが朝食に出したのは七草粥だった。
「七草粥か……。食べるのは久しぶりだから、嬉しいよ」
「そう? 良かった♪」
 依織の言葉にむぎは嬉しそうに笑う。
「腹が持たねえ……」
「白いご飯はあるから、お粥も食べてよ。一年、皆には健康で過ごして欲しいし」
 そう言って、むぎは麻生をたしなめる。
「むぎちゃんが毎日ご飯とシフォンケーキ作ってくれたら、僕、健康に過ごせるよ」
「……瀬伊くん。ご飯はともかくシフォンケーキはどうかと思うの」
 どさくさに紛れてのおねだりにむぎは溜め息を着く。
「あ…っと、一哉くん、起きてるかな?」
 一哉の分の七草粥を茶碗によそい、むぎはお盆に載せる。
「早く元気になるといいんだけど……。迷信だって笑われるかもしれないけどね……。皆には元気でいてほしいし……」
 むぎの言葉に三人は少しばかり、癪に思いつつ、むぎの気遣いに心を和ませた。
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