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一時的置き場
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「おいしいの♪」
「そっか?」
 ラ・プリンスお手製のジャムをパンにつけて、幼子は美味しそうに食べる。その様子に彼らもまんざらではない。
「おにいちゃん、むぎにもつくりかたおしえてね?」
「可愛いお姫様のお願いを聞かないわけにはいかないね」
 依織の言葉に幼子は嬉しそうに笑う。
「ちび、ほっぺにジャムが着いてるぞ」
「ん~。どこ?」
 麻生の指摘に、幼子は指でジャムを拭おうとしてする、見当違いの場所ばかりを撫でている。
「ここだよ、こむぎちゃん♪」
 不意に瀬伊が幼子の頬についたジャムを舐めとる。
「ん、やっぱり美味しい♪」
 悪戯っぽく笑う瀬伊に深い意図など疑いもしない幼子は無邪気に頷く。
「おにいちゃんたちのジャム、おいしいの♪」
 無邪気に笑う幼子には何の罪もない。幼子の無邪気さに付け入る瀬伊に問題があるのだから。
「一宮、通報されたくなかったら、むぎが食ってる半径1メートルには近付くな……」
 1メートルという微妙な距離に幼子が泣かずにすむ範囲なのだろうと、一哉の妥協に麻生は何とも言えない気分に陥った。
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 稽古の後に携帯を取り出すと、メール着信のランプがついていた。メールの差出人の名に皇は表情を緩ませる。手帳の件での返信だろう。
『じゃあ、明日行くから。材料かって置くから、何か食べたいものがあったらメールしてね(^^)』
望んでいたメールの内容。今から、明日が待ち遠しくて仕方なくなる。
「あの女からのメールか?」
不意に話しかけられ、皇は慌てて携帯を閉じた。
「童子……。誰からでも構わないだろう?」
 一番足掻いていた時期に親身になってくれた彼には皇も感謝はしているが、むぎとのことで口を出されたくはない。そんな皇に童子は苦笑する。
「もう反対はしないが……。いい表情をするようになったしな。ただ、あの女からの電話にしろ、メールにしろ、表情に出ているからな」
「出ているか?」
「お前、自覚がないのか?」
 きょとんとする皇に童子の方が驚きを隠せない。最近の松川左京の芝居には艶が出てきたと評価されている。恋も役者の修行とはよく言ったものだと思ったのだ。
「まぁ、いいが」
 本人に自覚がなくても、彼が今幸福であるのなら…と童子は

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 帰宅すると、ラ・プリンスたちから甘い香りがすることにむぎは気付いた。
「麻生くん、ちょっといい?」
「何だよ?」
「ちょっと気になるの」 そう言って、むぎはクンクンと麻生の匂いを嗅ぐ。
「な、何なんだ?」
「みんなから、甘い匂いがするの……。何でかなぁと思って……。果物? イチゴ?」
「あぁ、祥慶フェス用にジャムを作ったからな。その匂いだろうな」
「ジャム? あぁ、だからか……」
 納得したようにむぎは頷く。
「そうだよ、美味しいジャムに仕上がったんだよ♪」
「キャッ?!」
 背後から瀬伊に抱き付かれ、むぎは悲鳴をあげる。
「瀬伊くん、いきなり抱き付かないで~」
「ふふ、むぎちゃん。匂いを確認するなら、羽倉じゃなく、僕にしたらいいのに♪」
「やだよ。瀬伊くん抱き付くし~。麻生くんはそういうことしないもん」
 そう言って、瀬伊を何とか引き離す。
(安心されてんのか……)
 男として、ある意味複雑になる麻生であった。
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