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一時的置き場
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 どうにも埒のあかない問題に依織は溜め息を吐く。
「こむぎちゃんには可哀想だけど、ベビーシッターを頼むなりしないといけないな……」
 人懐っこいとは言え、知らない人間に預けられるストレスを考えると、気が重い。
「海外じゃなきゃ、連れて行くんだがな……」
 仕事で見てやれない間はホテルの託児所に預けるなりできるが、海外ではそうもいかない。
「修学旅行に連れてっちゃう? 学園長を泣き落としすれば何とかなるんじゃない?」
「だから、それは……」
 結局は堂々巡りの論議になってしまう。
「いっそ、丘崎に頼んでみたらどうだ? 事情はわかってもらってんだし」
 ラ・プリンス以外で唯一幼子の正体と事情を知る夏実の名を麻生が出して見る。
「それは俺も考えたが……。俺たちが帰ってきた時にあいつが丘崎さんちから帰りたがらなくなったらどうする……」
「御堂……」
 心配する所が違うだろうとはツッコミをいれられないのは、一哉がそれを本気で危惧しているからだ。

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「羽倉と一宮は修学旅行、松川さんは実家の用事、か……」
 スケジュール帳を手に一哉は眉を寄せる。一哉も急な海外視察が入り、家を明けることになったのだ。つまり、ラ・プリンス全員が家を明けることになったのだ。彼らだけの生活ならそれでよかったが、今のこの家には未だに目覚めぬ家政婦さんの小さい頃の姿をした幼子がいるのだ。四歳児を一人にこの家に置いておけるはずがない。
「修学旅行くらいサボるよ。一哉たちは行っておいでよ」
 学校行事にはさほど興味がない瀬伊がそう言うが、一哉はスケジュール帳をパタンと閉じて言った。
「却下だ。ラ・プリンスが学校行事に参加しないなど、言語道断だ。それにお前が行かないと羽倉も行かないと言うことになる」
「え~。そのくらいいいじゃん。ラ・プリンスが必要なら羽倉だけ行かせたら? ラ・プリンスのどっちかがいれば問題ないだろ」
 一哉の一刀両断に瀬伊が可愛らしくすねて見せるが、
「んなわけにはいかないだろうが」
と、麻生はげんなりした顔をする。色々な意味で瀬伊と幼子を二人きりにするわけにはいかないし、瀬伊だけでも、家がぐちゃぐちゃになってしまいかねない。
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 4号サイズの小さなデコレーションケーキを帰り道で買って、瀬伊は家路を急ぐ。
「ただいま、こむぎちゃん」
「せいおにいちゃん、おかえりなさい♪」
 にこにことと出迎えてくれた幼子に瀬伊はケーキの入った箱を手渡す。
「なぁに?」
「ケーキだよ♪ 一緒に食べようね」
「うん♪」
 嬉しそうに頷く幼子をリビングに行かせ、瀬伊は自室に戻り、手早く着替えてキッチンへ。アイスティーとフォークを二人分用意してから、リビングに入る。
「お待たせ、こむぎちゃん。ケーキの箱、開けてもいいよ」
「うん♪」
 いそいそと箱を開けると、中には苺がたっぷりと載せられた小さなデコレーションケーキ。
「わぁ……」
 キラキラと瞳を輝かせる幼子に瀬伊も自然と笑顔になる。
「どうしたの?」
「今日はお兄ちゃん、誕生日なんだ。こむぎちゃんとお祝いしたくてかってきちゃった♪」
「わぁ、せいおにいちゃん、おめでとう~」
 ぱちぱちと拍手をしてから、不意に幼子の顔が曇る。
「どうしたの?」
「むぎ、プレゼントないの……」
 誕生日プレゼントを渡せない…と顔を曇らせる幼子の両頬を瀬伊は包み込む。
「う~ん。おにいちゃん、こむぎちゃんと一緒にケーキ食べたかったからそれがお祝いじゃだめ?」
 そんな顔をさせたくはなかったから。
「でも……」
「じゃあ、HAPPY BIRTHDAYの歌を歌って? ね♪ こむぎちゃんが歌ってくれたら嬉しいな」
「うん」
 瀬伊の言葉に頷いて、幼子はHAPPY BIRTHDAYを歌い始めた。それが何より嬉しいと瀬伊は思った。
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